悪用厳禁!人の「無意識」に語りかけるテクニック
「あと少しご飯残ってるんだけど、食べれる?」
こんな質問を妻にされると、「まぁ、これだけなら食べれるか」と思い、食べてしまいます。
実はこの普段何気ない質問にも命令が含まれているのわかりますか?
「食べきってくれ」っていうメッセージですね。
これをコミュニケーション心理学「NLP」では、埋め込み質問(命令)といいます。
「NLP」の発展に貢献した1人、ミルトン・エリクソン氏の提唱する『ミルトンモデル』と呼ばれるテクニックの1つです。
正直、この『ミルトンモデル』を知っているのと知らないのとでは、仕事においても恋愛においても大きく差が出てくるのではないかと私は思っております。
ミルトンモデルとは?
20世紀最大の心理療法家と呼ばれた、ミルトン・エリクソン氏の言葉の使い方をモデル化したものです。
言葉の曖昧さを巧みに利用し、聞き手の内に秘めている体験を自分自身にあてはめさせる技法を使ったと言われております。
催眠療法の第一人者として世界中の人々に絶賛され、ファンも多く『ミルトンモデル』の書籍も数多く出版されております。
多くの心理学者は心の底にあるトラウマなどマイナスな部分には蓋をしてしまうという考えなのに対し、エリクソン氏はどんな悲惨な出来事を過去に体験していようが、それも含めたすべてが宝だと発言したそうです。
人は顕在意識(意識的に行うこと)より潜在意識(無意識に行ってしまうこと)に従ってしまうことが多い生き物です。
※「潜在意識」についてはコチラの記事にてご覧ください。
この「ミルトンモデル」は人の無意識に訴えかけることで、その人に気づきを与え行動を起こさせる、そんなテクニックなのです。
それでは具体的なパターンについて一つずつ解説していきます。
マインドリーディング
直訳すると「読心術」。相手の考えや気持ちがさもわかっているかのように話す技法です。
この技法が身につくと、会話の上で優位な立場になり、自分の思う通りの方向に話を持っていくことも可能です。
例:『今のこの話を聞いて、「自分にはとても無理だ」そう思われたのではないでしょうか?』
価値判断者の削除
誰が言ったことなのか、誰が価値判断を下しているのか明確でない、言い回しのことです。
世間一般では当たり前ですよ、みたいな言い回しの為、聞く人は「そうなんだ」と受け取るようになるのです。
例:『疑問を抱くことはとても良いことです』
原因ー結果(因果関係)
何かが起こる(起こった)からこうなった(A→B)、など一つの事が他の事を引き起こすことを意味しています。
人は A「こんなことがあったから」B「こうなった」 といった言い方をされると、多少めちゃくちゃな因果関係だとしても受け入れやすくなります。
例:『一晩寝ると、悩みは消えます』
複合等価
二つの事が等しいという表現をすること、A=Bだというような言い回しをすることで、聞き手に「そうだよね」と思わせます。
このAとBの関係が必ずしもイコールでなくとも、「~ということは」「よって」の言葉でつなぐと、聞き手に「確かにそうかもね」と思わせやすくなります。
例:『公務員にさえなってしまえば(A)、将来は安泰です(B)』
前提
聞き手に対して受け入れて欲しい内容を理解させた上で、話をすすめていく表現です。
それありきという意味で伝えるので、無意識にその部分を受け容れさせることができます。
例えば、
『この音楽の魅力って、ピアノの演奏技術にあると思いませんか?』
と、表現することで相手が、
『いやいや、バイオリンじゃないかな?』
『コーラスでしょ!』
と他の魅力を話したとしても、
『この音楽は魅力的だ』ということを認めたうえで話が進むのです。
この前提には他にもいくつかパターンがあります。
時間
『~の前に』『~の後』『~の間』といった時間軸で表現します。
例:『〇〇さん、マイホームを手に入れたら、どんなイメージのお部屋にしたいですか?』
序数
『まず』『第一に』『別の』というようにその次や他にもある表現をします。
例:「まずは目の前の仕事、片付けちゃいましょうか』
ダブルバインド
『それとも』『もしくは』といった選択肢を与えるような表現をします。
例:『コストパフォーマンスが良いこちらの商品か、高級感溢れるこちらの商品、購入するならどちらが良いですか?』
注釈
『幸いに』『運よく』『残念なことに』というように、前に置かれた言葉がこれからの話の流れをつくる言い回しとなります。
例:『運よく左小指の骨折で済んだんですよ』
普遍的数量詞
『すべて』『いつも』『誰もが』といた言葉で、例外はないよと表現する伝え方です。
説得力を高めるといったある種の強いメッセージを伝える時に利用します。
例:『誰もがこの商品の魅力を実感し、リピートされています』
叙法助動詞
可能性を表す言葉を使う技法です。
『~できる』『~かもしれない』という可能性を広げる表現や、『~すべき』『~すべきではない』など必要性を示す表現で選択肢のない状態(前提)を受け容れさせます。
例:『あなたなら3か月あれば、この課題をクリアできるでしょう』
このように「できる」と表現することで、たとえ可能性が数%だとしても「可能性がある」ことにフォーカスされるので、受け入れざるを得なくなります。
名詞化
動きのあるもの(動詞)をある単語に変えていきます。
抽象化された言葉を使うことで、聞き手自身が自らの体験を通じて自分にとって相応しい意味を探して解釈します。
例:『それって以前から継続してきたことが、成果として表れたということではないですか?』
この例では「継続」が名詞化されています。
聞き手は「あれを続けてきたことが良かったのか?」と自分の体験を創造します。
不特定動詞
「どのように」と具体的に明示されていない動詞を使い、あえて具体的にしないことで、能動的に解釈させる効果があり、自分の感覚で意味付けを行います。
例:『走ってきて!』
聞き手の思う速度で走ってきます。
このパターンは具体的指示がないので、話し手が思う以上の事をしてくれることもある反面、人によっては思う以上のパフォーマンスを行ってもらえない事象も出てくるので、使い分けが必要です。
付加疑問文
否定と同時に明言を受け容れさせる表現です。
付加疑問は2つの明言で成立します(明言+明言の否定)
これによって、YESかNOの判断をつかなくさせることで明言を受け容れざるを得ない状況をつくります。
例:『〇〇君って〇〇さんの事好きでしょ?違う?』
〇〇さんのことが気になってくるはずです。
参照・指標の削除
聞き手に指示を解釈させる表現です。
「あれ」「それ」「これ」など、何を指すのかを曖昧にすることで指示対象が広範囲になります。
すべて聞き手が考えないといけない解釈なので、聞き手の中にある感覚を使いたいときに利用します。
例:『おとといの夜、あそこで何してたの?』
思いもよらぬことまで話してくれるかもしれません。
比較の削除
比較対象をあえてなくしてしまうことで、それが一番なのだと感じさせる表現です。
例:「地域最安値!」
どの範囲の地域でのことを指しているのかわかりませんが、安いのかなって思ってしまいますね。
現在のペーシング
誰もが当たり前だと思うこと、実際に目の前で起こっていることを明言します。
YESを引き出すには、当たり前の事実をいくつか並べ、それに基づいた質問を投げかけることで、それが論理的に述べられているか否かに限らず受け入れる傾向があります。(YES・SET)
例:『あなたはその椅子に浅く座っていますね。膝に手を置いている。そして私の言葉に耳を傾けている。そして、私がマーカーを手に取りホワイトボードに向かうと、ノートとペンを取り出し、メモをとる準備をし始めるはずです』
ノートを意図的にとらせようと誘導しています。
拡張引用文
誰かの言った言葉を引用していきます。
他の誰かが言ったことを報告しているかのように話すことで、自分が明言の責任を取ることなしに伝えたいメッセージが送れて、聞き手は反応するが反抗しづらくなります。
権威のある人の発言を使うほど効果が出やすくなります。
例:『友人の通っている塾の先生がいて有名な人らしいんだけど、その先生が言うには勉強するなら自律神経の整っている朝の方が良いらしいよ』
選択的制限違反
人と同じように物や動物にも思考があるかのように話すことで、自ら意味付けしたり理解しようとする表現です。
例:『そんな好き嫌いしてもいいの?ニンジンさん悲しむよ?』
曖昧性
言葉だけではどのように解釈すべきかわからないことにより、自ら意味付けや解釈するしかなくなる表現です。
聞き手に対してどう思わせたいのかを意識して話すようにすすめていきます。
例:『みんな毎日何かしら勉強しているものですよ』
「みんなって誰かな?自分の同世代?老若男女問わず?」
「何かしらって何だろう?仕事のこと?資格の勉強とか?」
勉強をしている自覚がない人なら、今の自分の在り方を考え始めるかもしれませんね。
まとめ
いずれも人の『無意識』の部分に働きかけているテクニックです。
人は無意識の部分を刺激されると、優先的に反応してしまいます。
この特性をうまく利用することで、人生のあらゆる面で役立つのテクニックではないかと私は思っています。
何度も読み直して、自分のスキルとして活用していただければ幸いです。